ピエゾ技術のチュートリアル

目次

 

関連リソース
ピエゾ技術のチュートリアル (.pdf)
QNPシリーズピエゾナノポジショナー
Ensemble QLABピエゾモーションコントローラ

1.0 正圧電効果と逆圧電効果

1880年、Pierre Curie(ピエール・キュリー)とJacques Curie(ジャック・キュリー)の兄弟が、トルマリン、石英、トパーズ、そして甘蔗糖とロッシェル塩の結晶を使った実験をしていました。2人は、結晶に機械的応力をかけると、その結晶の表面にわずかな電荷が発生することを発見しました。 接頭語の「piezo(ピエゾ)」はギリシャ語のπιέζειν(圧搾する、押すという意味)を語源としています。 結論として、圧電気は特定の物質から生じる電荷であり、その物質に機械的な応力や圧力がかけられた時に発生します。 これが正圧電効果と呼ばれるものです。

このにあたる逆圧電効果とは、電場を印加するとひずみが生じる現象で、1881年にGabriel Lippmann(ガブリエル・リップマン)が熱力学の法則を応用して発見しました。 この逆圧電効果こそが位置決め用途で圧電物質を使用している理由です。


トップに戻る

2.0 ピエゾアクチュエータ物質

逆圧電効果を示す物質は多数ありますが、応用範囲も圧倒的に広いために最も頻繁に使われ圧電物質は、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)です。 PZTという名称はさまざまなセラミックの総称として使われ、主原料である鉛、ジルコニウム、チタンの結晶粒径や混合比によって異なる特性を示します。 セラミックの特性は、ドーパントを添加して製造工程を調整することでも操作できます。 通常、個々の物質の配合はサプライヤーの独占所有権であり、会社ごとに異なります。


トップに戻る

2.1 RoHSの適用除外

ドーピング物質として鉛が含まれるにも関わらず、適切な置換原料が無いことから、PTZはRoHS指令2002/95/ECの対象外となっています。 代替物質を開発する努力が続けられていますが、適切な代替品が見つかる見通しは、まだこの先何年もたっていません。


トップに戻る

3.0 ピエゾアクチュエータの特性


3.1 変位特性

加えられた圧力や電場に対する圧電物質の反応は、分極方向との関係に依存します。 このため、圧電物質について記述する大半の電気的・機械的特性も方向に依存します。

逆圧電効果を数式で表すと次のようになります:
式-1
ここでxjはひずみ(m/m)、dijは圧電電荷係数(m/V)かつ物質特性、Eiは印加電場(V/m)です。 下付き文字のiは、ひずみの方向、jは印加電場の方向を表します。 電場は一定距離間の電位差であるため、電荷の分離距離が非常に小さい場合は小電圧で大きな電場を生成することができます。

原則として、市場にある大半のPZT材料は、約2 kV/mmの印加電場に対しひずみ(xj)が0.1~0.15%です。 例えば、有効長20 mmのPZTアクチュエータは約20~30μmの最大変位を生じます。 250 μmを得るためのPZTスタックは約170~250 mmであることが容易に分かります。 従って、移動量が50 μmより大きいピエゾたわみステージの多くでレバー増幅が使用され、よりコンパクトなパッケージでより長い移動量を実現しています。 デバイスの剛性は使用するレバーの増幅率の二乗に比例して増加するため、デバイスの最終的なパッケージサイズと剛性の関係はトレードオフになります。 Aerotechのピエゾナノ位置決めステージは、コンパクトなステージパッケージで優れた機械的性能を提供できるよう最適化されています。


トップに戻る

3.2 ヒステリシス効果

圧電物質は、材料区分としては強誘電体の一種です。 強誘電性とは、電場によって逆転する自発電気分極を持つ物質の特性です。 磁性体(強磁性体)と同じく、強誘電物質は印加電場とその履歴に基づいてヒステリシスループを描きます。 図1は、限界まで励起させたPZT原料のひずみ(X)-電場(E)「バタフライ」曲線です。

図-1最終

電場が正、負、正と循環するに従って、ピエゾアクチュエータには以下の変化が生じます:

A: 最初は、電場に合わせてひずみも上昇し、ごくわずかに非線形です。 電場が上るにつれ、最終的に全粒子の双極子は可能な限り最適に電場と一直線になり、粒子のひずみが物理的限界に達します。

B: 電界が逆転すると、双極子が再び向きを反転させるため、ひずみはより緩慢に減少します。 電界がさらに小さくなると、双極子が定位置とは逆向きに緩みだし、ひずみの減少速度は速まります。

C: 電界が負になると、双極子は定位置から引き離されます。 臨界点に達すると、双極子の向きが完全に逆転し、ピエゾアクチュエータは逆向きに分極します。 分極が反転した時点の電場は抗電場(Ec)と呼ばれます。

D: 分極の反転後、圧電材料はそのひずみ限界まで再び膨脹します。

E: 電場は再び逆転し、ひずみの減少に伴った曲線Bと同じ履歴挙動が起こります。

F: 電場は反転の強制限界まで逆方向に駆動し、双極子は元の分極定位置に戻ります。

G: ピエゾアクチュエータは、印加電場によってその物理的限界まで膨脹します。

位置決め用途では、一般に、ピエゾアクチュエータは飽和と抗電場限界を退けた曲線部分(ABC)のセミバイポーラ電圧で駆動します。 図2は、この曲線部分におけるピエゾアクチュエータスタックの変位と印加電圧を示した例です。

図-2最終

Aerotechのアンプは、ピエゾスタックアクチュエータのセミバイポーラ電圧を最大限活用しています。 弊社のアクチュエータは非常に高い分解能を持ち、-30 V~+150 Vで動作するよう設計されています。 この電圧範囲で、開ループヒステリシス値は最大でピエゾステージの全体的な開ループ移動量の10~15%にもなります。 閉ループでのピエゾステージ操作は、アクチュエータのヒステリシスを事実上除去し、位置決めの繰り返し精度は1桁のナノメートルレベルになります。


トップに戻る

3.3 クリープとドリフト

電場を受ける圧電セラミックの応答時間は、個々の双極子の再配向時間よりはるかに速いです。 この現象は、開ループ位置制御に望ましくない動作を引き起こします。 電場がかけられると、ピエゾスタックはほぼ瞬時に対応する変位を生じます。 その一方で、電場を一定に保つと、ピエゾスタックは双極子が再配向しだすとゆっくり動き続けますが、この現象はクリープと呼ばれます。 クリープ速度は、初期のひずみ位置を超えて1%~5%増加するため、定常状態に至るまで何十分、何時間もかかります。 同様の効果にゼロ点ドリフトがあります。 電場が取り除かれると双極子が徐々に緩みだし、定常状態に戻るまでゆっくりと動き続けます。 ピエゾアクチュエータまたはステージを閉ループ制御で操作すると、コントローラがリアルタイムにこの動きを相殺して出力モーションを希望する位置で維持するため、ドリフトを解消します。


トップに戻る

3.4 力と変位

 

3.4.1 力-変位特性

アクチュエータが分極方向に作用して生成された力は、アクチュエータの全長とはまったく無関係で、アクチュエータの断面積と印加電場によってのみ決まります。 図3は、異なる印加電圧による、ピエゾアクチュエータの力と変位の出力図です。

図-3最終

図3を検証した結果、興味深い特徴がいくつか明らかになりました。 ピエゾアクチュエータの力と変位は印加電圧の増加に伴って増えています。 ピエゾアクチュエータの最大力出力または阻止力は、アクチュエータ全体に定格電圧がかけられ、アクチュエータの出力が「阻止」されるか動く自由を持たない場合に生じます。 アクチュエータが膨張するにつれて力の生成能力は減少し、アクチュエータの最大定格変位で力出力がゼロになるまで減少します。


トップに戻る

3.4.2 一定の外部荷重による変位

図4は、ピエゾアクチュエータまたはステージに一定の外部荷重がかけられた場合を示しています。

図-4最終

ピエゾステージまたはアクチュエータに何も荷重がかけられていない場合(事例1)、ピエゾのストロークはΔL1で示されます。 ピエゾステージに質量を加えた場合(重力方向に膨張)、初期偏向(ΔLo)は次のように計算されます:
式-2
ここでkpは運動方向のピエゾステージの剛性、mはかけた荷重です。 ピエゾステージにかけた質量mにより、ステージは距離ΔLoだけ圧縮されていますが、ストロークΔL2は無負荷のステージと同じままです。 すなわち:
式-3


トップに戻る

3.4.3 外部ばね荷重による変位

図5は、ピエゾアクチュエータまたはステージが外部ばね荷重に抗している場合を示しています。

図-5最終

ピエゾステージまたはアクチュエータに何も荷重がかけられていない場合(事例1)、ピエゾのストロークはΔL1で示されます。 ばね荷重に抗している事例2の場合、ピエゾステージの剛性(kp)と外部の剛性(ke)は連続で作用し、アクチュエータの全体的なストロークを減少させます。 事例2のストロークは次のように求められます:

式-4

方程式4の検証の結果、ピエゾステージのストロークを最大にするにはピエゾステージの剛性(kp)が外部ばねの剛性(ke)よりずっと大きくなければならないということが明らかです。


トップに戻る

3.5 静電容量

PZTアクチュエータはコンデンサとして電気的にモデル化できます。 幾何学配置や物質特性という意味でコンデンサを記述する基本方程式は:

式-5

ここでCは静電容量(単位F)、Aは電場の方向に垂直なコンデンサの断面積(単位m2)、Tは電気的に分極している誘電体(単位m)、εは電気的に分極している誘電体の誘電率です。 誘電率は次のように表されます:

式-6

ここでε0は真空の誘電率(~8.85x10-12F/m)、εrは物質の相対誘電率(絶縁定数とも呼ばれる)です。

低電圧、多層アクチュエータは、低電圧(200 V未満)で0.1~0.15%の呼びひずみを可能にするため、通常ナノ位置決めに使われます。 こうしたアクチュエータの最大電場印加は1~4 kV/mmの範囲内です。 アクチュエータは、電極で仕切られた薄い層(通常、厚さ50~200 μm)で構成されているため、結果として印加電圧は層の厚さが1 mmまである高電圧アクチュエータ(約1000 V)と比べて低くなります(200 V未満)。 各層(Tlayer)の厚さは、ピエゾアクチュエータの全体的な有効長(Lo)を層の数(n)で割ったものと定義できます。 多層アクチュエータのピエゾスタック静電容量は、層の数(n)と全体的な有効長(Lo)によって決まります:

式-7

ナノ位置決め用途で用いられる低電圧、多層ピエゾアクチュエータの標準的な静電容量は、0.01~40 μFです。 Aerotechのデータシートに記載されている静電容量は、小信号条件(1 kHzで1 Vrms)で測定されています。 大信号動作(100~150 V)では、静電容量が最大60%増加することが想定されます。 この静電容量の増加はサイジングの計算に使う必要があります(セクション5を参照)。

コンデンサ(C)を流れる電流(i)は時間軸における電圧の変化に比例します。 これを数学的に表すと:

式-8

ピエゾステージの駆動に欠かせないアンプの適切なサイジングには、このシンプルな関係式が必要です(セクション5を参照)。


トップに戻る

3.6 加熱と電力損失

理想的なコンデンサは熱として電力を損失することはありません。 しかし実際問題として、ピエゾアクチュエータは理想的なコンデンサとしては機能せず、電力がアクチュエータを流れる際に熱を生成する何らかの内部抵抗が存在します。 誘電体の損失率、また損失正接は次のように定義されます:

式-9

ここでESRはコンデンサの等価直列抵抗、Xcは容量リアクタンスです。 損失正接は有効電力(抵抗力)(P)と無効電力(Q)の比率でも表されます:

式-10

交流電場を印加するなど、損失正接が大きいほど、エネルギーが熱に変換される(損失エネルギー)割合が高くなります。 通常ナノ位置決め用途に用いられる軟質PZT原料の場合、損失正接は一般に低振幅信号(約1~10 V)で.01~.03、高振幅信号(約50~100 V)では最大0.1~0.25になります。

無効電力(Q)は次のように定義されます:

式-11

単一周波数(f)の場合、容量リアクタンスは:

式-12

方程式10、11、12を使うと、振幅Vpp/2、周波数fの正弦波電圧において、ピエゾアクチュエータの電力損失は次のように示されます:

式-13

方程式13はとても有用な近似値を出し、ピエゾ装置における電力損失の影響を示します。 この電力損失は、動作周波数とピエゾアクチュエータの静電容量に直線的に比例し、時間によって変化する印加電圧の二乗に比例します。 電圧は位置に比例するため、電力損失は、ピエゾステージにかけられた指定の時間変化の位置信号の二乗に比例します。

図6は、静電容量4 μFの標準的なピエゾアクチュエータにおいて、電力損失が周波数と印加電圧によって変化する様子を示します。

図-6最終

温度の上昇はアクチュエータの電力損失に比例します。 ピエゾアクチュエータ/ステージの温度上昇を特定するには、ステージの正確な特性や設計(材質、接触面など)面での深い知識が必要です。 図6を検証することで、一般に、熱が問題になるのは、信号振幅が非常に高く(高電圧や大きな位置振動など)周波数も高い場合のみであることが分かります。 大半の位置決め用途では、ピエゾナノ位置決めステージにおける電力損失と温度上昇はごくわずかです。 大きな位置振動や高周波数を必要とする用途については、Aerotechの応用エンジニア部門にお問い合わせください。 お客様の用途にぴったり合ったピエゾナノ位置決め装置のサイジングをお手伝いいたします。


トップに戻る

3.7 環境への影響

 

3.7.1 湿度

耐久性を確保する上で最も重要なことは、ピエゾアクチュエータを湿気から守ることです。 Aerotechではアクチュエータを湿気から守るために特別な密封コーティングを使用しています。 アクチュエータの耐用年数をさらに延ばすには、相対湿度60%以下の環境における運転が推奨されています。


トップに戻る

3.7.2 温度

ピエゾアクチュエータは、非常に高温もしくは低温(極低温)で運転するよう設計することができます。 運転の最上限は、圧電物質のキュリー温度です。 キュリー温度に達すると、圧電物質はその圧電効果を失います。 ピエゾアクチュエータ物質のキュリー温度は140~350°Cですが、圧電特性は温度に依存します。 このため、Aerotechのピエゾアクチュエータの最高動作温度は約80°Cとなっています。高精度位置決め用途においては、この温度に近づくとピエゾステージの精度とパフォーマンスに深刻な有害作用が生じます。

ピエゾアクチュエータは、非常に低い温度での運転にも適しています。 圧電物質の結晶は、温度がどんなに低くなってもその圧電構造を保持します。 標準的な市販のスタックアクチュエータは、-40ºCまで問題なく動作します。 低温環境で一番の問題は圧電性自体ではなく、機構の熱収縮からくる誘発ストレスです。 超低温環境では、アクチュエータが冷却過程に耐えられるように設計には特別な配慮が必要です。 電極を慎重に選定し、極めて均質なセラミックを必ず使って、熱膨張係数の不一致により割れることがないようにします。

圧電セラミックは、低温では異なる特性を示します。 低温ではセラミックが硬くなり、1 Vあたりのひずみ量が減少します。 しかし、結晶構造内の電気的安定性が上昇して相殺され、完全に双極の動作を可能にします。 低温運転の利点は、他にもヒステリシスの低下、直線性の向上、静電容量の低下、誘電体損失の減少などがあります。

最も高い精度を得るために、Aerotechでは、ナノ位置決めステージの構築/較正を行うのと同じく、20°C前後での運転を推奨しています。 お客様の業務において極端な温度環境での使用が見込まれる場合は、Aerotechの応用エンジニアまでお問い合わせください。どのような環境でも最高の性能を発揮できる、最適なピエゾ位置決めステージの選択やカスタマイズをお手伝いいたします。


トップに戻る

3.7.3 真空

低電圧(<200 V)ピエゾアクチュエータは、特に真空での運転に適しています。 超高真空用途にピエゾアクチュエータを選ぶ場合、通常なら丁寧に行われる潤滑剤を必要としません。 10~10-2トールの真空圧(別名コロナエリア)は、空気の絶縁抵抗が劇的に低下し誘電破壊が起こりやすくなるため、避けてください。 Aerotechのピエゾナノ位置決めステージは、超高真空での運転にも対応します。


トップに戻る

4. ピエゾステージの特性と用語体系

Aerotechのピエゾナノ位置決めステージシリーズは、エンドユーザーを念頭に置いて設計しています。 その結果、用途や最終過程としてぴったりなものをお選びいただくためにも、お客様に弊社の仕様をしっかりと理解していただくことが重要です。 以下に、仕様についての記述と、弊社のデータシートで使われている用語を挙げました。


トップに戻る

4.1 精度/直線性

セクション3.2でも申し上げた通り、ピエゾアクチュエータは、開ループモードで運転した場合にヒステリシスと非直線性を示します。 閉ループモードで運転した場合、ピエゾアクチュエータのヒステリシスが原因の非繰り返し精度は除去されます。 それでも、ピエゾステージが装置の全体的な位置決め精度に影響を与える非直線性やヒステリシスを示す可能性はあります。 非直線性の程度は、設計で使われている閉ループフィードバックセンサーやエレクトロニクスの質、機械的なステージデザインの質によって決まります。 弊社の高分解能静電容量センサーを使うことで、高度な電子機器や最適化したたわみ設計、0.02%未満の直線性誤差を実現できます。 精度と直線性は、正確なレーザー干渉計を用いて、ピエゾナノポジショナーの移動キャリッジ上約15 mmで計測します(別途記載がない限り)。

精度と直線性という用語は、ピエゾナノポジショナーの位置決め機能について説明する際に同意語として用いられることがあります。 しかし、意味に微妙な違いがあることがあります。

精度とは、位置決めステージが指示に従い移動量全体にわたって双方向に動作した結果、その呼び指令位置から測定されたピークツーピーク値の誤差(マイクロメーター、ナノメートルなどの単位で報告)として定義されます。

直線性とは、位置入力/出力データの最良適合ラインからの最大偏差として定義されます。 直線性は、位置決めステージの測定範囲もしくは移動量の割合(%)として報告されます。

精度および直線性試験の測定結果を未加工のまま一部図7に示します。 精度のグラフを図8に示します。 精度の結果にはデータにわずかな残差勾配があることにご注目ください。 図7に示した測定データに対する最良適合ラインの偏差は、直線性誤差を計算するために使用します。 この最良適合ラインからの残差と、直線性誤差の計算方法を図9に示します。

図-7最終

図-8最終

図-9最終

結論として、精度という用語は感度効果(測定位置対実位置の勾配)と位置決めにおける非直線性の双方を定量化するために使われ、ピークツーピーク値で報告されます。 直線性という用語は、位置決めのみにおける非直線性の影響を定量化するために使われ、測定位置データ対実位置データの最良適合ラインからの最大誤差もしくは残差偏差として報告されます。 位置決め精度は、直線性仕様を2倍するとその近似値が得られます。 例えば、100 µmのステージに対して0.02%の直線性は、20 nmの最大偏差となります。 精度誤差の近似値は、ピークツーピーク値で2 x 20 nm、つまり40 nmです。


トップに戻る

4.2 分解能

分解能とは、ピエゾナノ位置決めステージにおける検出可能な最小の機械的変位として定義されます。 ピエゾステージの大半のメーカーは、どんなに小さな電場の変化でもピエゾスタックに何らかの機械的膨脹(または収縮)を引き起こすため、ピエゾアクチュエータの分解能は理論上無限だと主張します。 理論上は正しいのですが、ピエゾアクチュエータ/ステージはどれも何らかのノイズを発生させる電子機器やセンサーと一緒に使われているため、現実性はありません。 一般に、装置から発生するノイズは測定センサーの帯域幅の増大に伴って上昇します。 結果的に、ピエゾナノポジショナーの分解能(またはノイズ)は、フィードバックデバイスのセンサー帯域幅と相関関係があります。 Aerotechのピエゾアンプやフィードバック回路は、低ノイズ/高分解能を提供するために最適化されており、非常に厳しい性能が要求される用途にも適しています。

Aerotechでは、分解能を1シグマ(rms)ノイズ、またはジッタとし、断りのない限り、外部センサー(精密静電容量センサーかレーザー干渉計)により測定帯域幅1 kHzで計測された値です。 ステージサーボ帯域幅は、ピエゾナノポジショナーの初期共振周波数の約1/3~1/5に設定されています。一般に、サーボの安定を保つことができる最大のサーボ帯域幅がこの周波数だからです。 ノイズは主にガウスノイズであるため、1シグマ値の6倍がピークツーピークのノイズ近似値となります。 断りのない限り、測定点は中央で、出力キャリッジの約15 mm上の高さとします。 ノイズのクリティカルな用途においては、低いサーボ帯域幅で測定することで低ノイズ(ジッタ)を実現できます。

値は開ループと閉ループの分解能用に指定されています。 開ループ分解能は電力工学機器のノイズのみに影響する一方で、閉ループ分解能はフィードバックセンサーや電子機器、パワーアンプのノイズにも影響します。


トップに戻る

4.3 繰り返し精度

AerotechのQNPピエゾナノ位置決めステージの繰り返し精度は、複数の移動量全体にわたる二方向測定で計測した1シグマ(標準偏差)値と規定されています。 双方向繰り返し精度のおおよそのピークツーピーク値を求めるには、1シグマ値を6倍してください。 例えば、1シグマの繰り返し精度として規定された1 nmは、ピークツーピークで約6 nmとなります。

断りのない限り、測定点は中央で、出力キャリッジの約15 mm上の高さとします。仕様は、閉ループフィードバック操作のみに当てはまります。


トップに戻る

4.4 剛性

ピエゾアクチュエータまたはナノポジショナーの剛性は、出力キャリッジの移動方向に定められたものです。 剛性は、設計に使われているピエゾスタック、ステージのたわみ、増幅機構によって決まります。 剛性の高いピエゾステージは、より速い動きや整定時間、より優れた動的追跡性能など、位置決めにおいてより高いダイナミクスを実現します。

セクション3.1で述べた通り、移動量が50 μmより大きいピエゾたわみステージの大半がレバー増幅を使用し、よりコンパクトなパッケージでより長い移動量を実現しています。 レバー増幅を用いた設計では、直接連結した設計と比べて、移動量を減少させる方向に剛性を生じ(レバー増幅率の二乗に反比例)ます。 また多くの場合、レバー増幅を用いた設計では、増幅ゲインの非線形性のため、移動量内の位置に応じてアクチュエータの剛性が変化します。 このことから、製造上および装置の公差も合わせ、Aerotechのピエゾナノ位置決めステージの剛性は±20%の公称値となります。

Aerotechのピエゾナノ位置決めステージは、上質なダイナミックパフォーマンスとコンパクトなステージパッケージを提供できるよう最適化されています。


トップに戻る

4.5 共振周波数

ナノ位置決めステージの共振周波数は次のように概算できます:

式-14
ここでfnは共振周波数(Hz)、kはピエゾナノポジショナーの剛性(N/m)、meffはステージの有効質量(kg)です。
ごく一般的な意味では、通常、達成可能なサーボ帯域幅を制限するのは、位置決めシステムの最初の(最も低い)共振周波数です。 たわみの設計と支持構造、ピエゾアクチュエータの剛性は、この共振周波数の場所を左右します。 Aerotechは自社のナノ位置決めピエゾステージのダイナミクスを最適化して、硬く、高共振周波数設計の最適なステージパッケージを提供します。

ピエゾステージに質量を加えることにより、共振周波数は以下の相関関係で減少します:

式-15

ここでmloadはかけた荷重の質量です。

レバー増幅を用いた設計では、前述の通り、剛性は移動量にわたって変化し得ます。 その結果、共振周波数は剛性の変化量の平方根分が変化します。 例えば剛性が7%変化すると、共振周波数は移動量全体で約3.4%変化します。

方程式14と15は、ピエゾナノ位置決めシステムの共振周波数の一次近似をもたらします。 減衰、非線形剛性、質量/慣性効果に起因するダイナミクスの複雑な相互作用により、これらの計算は共振周波数の近似値のみを提供します。 お客様の用途や工程のためにより厳密な値が必要な場合は、お問い合わせください。設計ソリューションの内容や解析をお手伝いいたします。

Aerotechでは、自社のピエゾナノ位置決めステージの共振周波数を±20%の公差と所定のペイロード(無負荷、100グラム、など)で公称値と定めます。


トップに戻る

4.6 定格荷重

ピエゾアクチュエータはセラミック材料で壊れやすい性質を持ちます。 多くのセラミックと同様、PZTは伸長強度よりも圧縮強度が高くなっています。 弊社のステージデザインで使われているアクチュエータは、標準操作の範囲内では、常に圧縮荷重状態を保つように与圧されています。 弊社のデータシートには、移動方向に加えられた積み込みに関する押しと引きの負荷限界が記載されています。 ステージの中には、積み込みの方向によって定格荷重が異なるものがあります。 Aerotechの定格荷重はすべて最大値です。 弊社のデータシートでご提供しているものより大きな定格荷重が必要な場合は、Aerotechの応用エンジニアまでお問い合わせください。お客様のニーズを満たすように設計変更やカスタマイズがきます。


トップに戻る

4.7 耐用期間

Aerotechピエゾアクチュエータたわみステージに搭載された重要な誘導装置は、長期にわたる信頼性の高い運転を実現するために、FEAおよび解析技術を用いてサイジングされています。 たわみ用に選ばれた材料や寸法は、重要部位における耐久限界をはるかに下回る弾性曲げや圧力を確保します。

湿度や温度、印加電圧などの要素はすべて、ピエゾアクチュエータの耐用期間と性能に影響します。 セクション3.7でも述べた通り、弊社のアクチュエータは何千時間もの耐久性を確保するために密封され、テストされています。 何年にも及ぶ試験から得られた経験的データに基づいて、望ましい運動プロファイルとピエゾナノ位置決めシステムが使用される環境条件予測を基に、耐用期間の見積を行っております。


トップに戻る

5. アンプの選択

このセクションでは、あるピエゾアクチュエータと運動プロファイルを基に、ピエゾアンプの選び方を概説します。

ピエゾステージの変位は印加電圧に比例するため、基本的な移動量はアンプの動作電圧で決まります。 開ループ操作向けのデータシートには、開ループの移動量とともに電圧の範囲も記載されています。 通常、閉ループでの移動量は開ループでの移動量より短くなりますが、それは、同等の移動量を実現するために閉ループ制御でより多くの電圧マージンが必要となる(ヒステリシス、動的操作、クリープなどによる)ことに起因します。 閉ループ制御で使われるマージンはステージと用途によって決まりますが、閉ループでの移動量は開ループ制御用に定められた電圧範囲で実現できると想定すると控えめな見積となり、安全です。

動的な操作大半の用途では何らかの動的操作を必要とします。 移動量のさまざまな位置にサンプルや光学系を配置してタリーするという用途でも、ピエゾステージはその位置まで動く必要があります。

ピエゾスタックの最低共振周波数(通常10s~100s kHz)をはるかに下回る動作周波数では、ピエゾスタックはコンデンサとして動作します。 方程式8を思い出してください:

式-16

電圧は位置に比例するため、ピエゾアクチュエータは位置が変わる(ピエゾステージの作動中など)たびに電流を消費します。 これは、加速時と減速時だけに電流を消費(損失を無視)する、一般的なロレンツ系サーボモーターとは異なります。

弊社のアンプ出力は、連続電流とピーク電流を定格とします。 連続電流とピーク電流は次のように計算されます:

式-17


式-18

望ましい運動プロファイルの電流要件を仕様と比較して、アンプが必要な電流をピエゾアクチュエータに供給できるかどうか確認します。

図10に描かれている曲線の例は、さまざまなピエゾスタック静電容量の正弦波運動における電流定格と動作周波数に基づいた、アンプに可能な最大のピークツーピーク電圧を示します。

図-10最終

もう一つ、ピエゾステージを選ぶ際の電圧、電力、電流の計算例を考えてみましょう:

例1

ピエゾ静電容量が5 μFのステージで35 Hzで100 μmのピークツーピーク正弦波運動を希望しています。 選択したアンプには、セミバイポーラの+150 V/-30 V電源、300 mAのピーク電流定格、130 mAの連続電流定格があります。 このアンプはこの動きをするのに十分な電流を供給できるでしょうか?

例1計算

100 μmのピークツーピーク運動をするためには、全電圧幅を使用し、移動量の中間で、電圧はレール電圧の平均値となるとします(60 Vなど)。 それゆえ:

V(t) = 90 • sin(2 • π • 35 • t) + 60

静電容量は大信号条件の場合最大で60%増加することを考えると、この計算に使われている静電容量は5 μF • 1.6 = 8 μFと仮定されます。 続いて電流が次のように計算されます:

i(t) = (2 • π • 35) • 90 • 8e-6• cos(2 • π • 35 • t) = 0.158 • cos(2 • π • 35 • t)

従って、ipk= 158 mA、irms= 112 mA。 電圧と電流の波形を図11に示します。

図-11最終

この例では、ピーク電流と連続電流がすべてアンプの定格値より低くなっています。 従って、このアンプは希望する運動プロファイルを実行するのに必要な電流を供給することができます。

例2

4 msで0から100 μmに移動し、60 msタリー、その後4 msで100 μmから0に戻るという操作は、ピエゾ静電容量が5 μFのステージにおける希望する出力の運動プロファイルです。 希望するアンプには、セミバイポーラの+150 V/-30 V電源、300 mAのピーク電流定格、130 mAの連続電流定格が備わっています。 このアンプはこの動きをするのに十分な電流を供給できるでしょうか?

例2計算

方程式16、17、18を用いて例1と同じ計算をしました。 ここでも、大信号条件により、静電容量は最大で約60%増加すると考えられます。 電圧と電流の波形は図12に示します。

図-12最終

この例では、連続電流がアンプ定格より低くなります。 しかし、ピーク電流はアンプの最大電流定格を越えています。 従って、このアンプは望ましい運動プロファイルを実行するのに必要な電流と電力を供給することができません。

完全な ピエゾ技術のチュートリアル PDF版は ここ からご利用ください。

QNPシリーズピエゾナノポジショナーの情報は こちらでご覧ください。

弊社のEnsemble QLABピエゾモーションコントローラに関する情報はこちらからご覧ください。


トップに戻る